魅力は健常者柔道と変わらないルールと競技性

――視覚障がい者柔道を始めるきっかけは何でしたか?
米田「父が柔道をしていたのですが、私が、生まれつき目が悪かったものですから、近所の友達と外で遊べないことを心配して、父の通っている道場に遊びに連れて行ってもらったことから、柔道に親しみ始めました。それが3歳の時です」
石井「私は学校の体育の授業で柔道をやったのがきっかけです。中学の時に初めて体験して楽しいなと思っていて、高校でもう一度授業で柔道をやってみて、『本格的にやりたい』と思いました。それが高校2年生の時ですから、本格的に柔道を始めて、まだ10年にも満たないです」

――視覚障がい者柔道の魅力は何ですか?
米田「柔道自体は6、7割苦しいですよ(笑)。でも、苦しい練習をしてきた上で、試合に勝てた時が嬉しいです。また視覚障がい者柔道の魅力は、健常者の柔道とほとんど変わらないルールで、対等の関係で勝負できるという競技性だと思います。ですから、スピード感や迫力があり、見ていて楽しんでいただけると思います」
石井「練習も健常者の方たちと一緒に練習しています。毎日3時間、以前に三井住友海上女子柔道部の指導に携われていた鮫島元成先生が、筑波大学附属高等学校で教鞭をとっていらっしゃったご縁で、同校の高校生と一緒に練習をさせていただいています。また、週1回は実業団の柔道部の方たちと練習をさせてもらっています」

米田「健常者の方はやはり技術が高いのでとても勉強になります。視覚障がい者柔道の場合は、組み合ってから始めますので、それだとパワー勝負になってしまうことが多くて、技も一発勝負のところがあるのですが、健常者の柔道は組手争いがありますので、崩しの上手さや、連続技へのもって行き方の技術が高いです。そこに行くまでの過程がすごく勉強になります」
石井「鮫島先生は一つ一つの崩し方や技術を丁寧に指導してくださり、細かいノウハウを学ぶことができ、とてもためになりました」
米田「そうですね。また、鮫島先生は練習のご指導だけでなく、人としても尊敬できる方。間違っていることは間違っていると言ってくださるので、そういった意味で人生観も勉強させていただきました」
石井「現在は、息子さんで筑波大学付属高等学校で教鞭をとられている鮫島康太先生にご指導いただいています」
米田「康太先生も一人一人に向き合って、私たちが理解するまで時間をかけて丁寧に実演も交え指導してくださっていて、とても感謝しています」

――とても仲の良いお二人ですが、お互いに対決することもありますよね。
石井「国際大会は細かい体重別になっていますが、全日本視覚障害者柔道大会では出場選手が少なく、52kg超級でのオープン試合になることもあり、一緒に対戦することがあります」
米田「もちろん、負けてしまった時はやはり悔しいので、その直後からニコニコ笑って話すというわけにはいきませんが、それは、あゆが自分に対して全力を注いでくれたという結果。その時は悔しいけれど、学べることもいっぱいあると思っています。ですから、時間が経てばいつも通りの関係です。あゆは試合に対して気持ちの持っていき方がすごくうまいのです。私の方が上がり屋なのですよ」
石井「自分も緊張してますよ」
米田「全然そう見えないな」
石井「いいえ、プルプル震えています(笑)」
米田「あゆは試合でテンションが上がって乗り出すとすごいですよ。上手に気持ちを高揚させられる。私と真逆です。私は試合のずいぶん前から緊張しっぱなしで、結果を考えると怖くなってしまうので、夜も寝付けなくなってしまうタイプなのです。だから試合があることは受け止めつつ、内容は考えないようにしています…」
石井「私は、自分が練習でやってきたことをそこで全部出すという思いで、楽しみな部分もあります。テンションが上がってくるのを落ち着かせるために、試合前には音楽を聴いたりして自分の世界に入りきっています」