試合前はマイナス思考。でも、水に入ると「もうやるしかない!」

 3月6日、春季静岡水泳記録会が静岡県富士市でありました。大会前は緊張する方なのですが、久々の大会だったこともあり、いつも以上に緊張していました。さらに、マイナスなことばかり考えてしまって…。失格する夢を見たり、ゴーグル(*1)を間違えてしまう夢を見たり、泳いでも泳いでも壁がない夢を見たり。当日も「あ~失格だ! 失格だ!」とつぶやきながらレースへ向かいました(笑)。でも、水に入ると『もうやるしかない!』と思えて落ち着いたのです。今日はいける!と思うとむしろ全然ダメなんですよ。なぜでしょうか!?

(*1)=全盲のS11クラスでは遮光の施された規定のゴーグルを使用しなければならない。

 実は、この記録会直前に、はり・きゅうの国家試験があったため、腹筋や背筋などの自主練習しかできずにレースに臨みました。100m背泳ぎのタイムが1分29秒56。自己ベストよりも5秒も遅かったのですが、「やれることはやった」と自分に言い聞かせ、今後の努力につなげたいと思っています。社会人となった今、これからは練習場所や練習時間を確保でき、ひたすら練習に打ち込めるので、目標に向かってまっすぐ進んでいきたいです。目標タイムは…。大きく言いすぎて実現できなかったら嫌なのですが、自己ベストをあと4秒縮めて、背泳ぎ100m1分20秒コンマゼロを目指しています。水泳の世界で1秒縮めるというと難しいものです。泳ぎで2秒縮めるのは大変ですが、タッピング(*2)がうまくいかずターンで、もたもたしているとすぐに2秒過ぎてしまいます。泳ぎとターンの両方を短縮させることで目標に近づければと思っています。静岡の記録会でも、ターンするまでは隣レーンの選手とほぼ同じだったそうですが、寺西コーチの絶妙なタッピングのおかげで、ターンした後には体1つ分リードして、そのままゴールできました。寺西コーチのタッピング、絶妙なんですよ!

(*2)=視覚障がい者水泳ではターンやゴールのタイミングを知らせるために、選手の体を棒でタップして知らせる。

 寺西コーチには小学2年生からお世話になっていますので、かれこれ15年もご指導いただいています。選手の心理をすべて分かっているし、人間性も含めて本当に素晴らしい方です。練習は厳しいですし、要求してくるタイムも厳しいのですが、その中にも優しさを感じることができます。筑波大学附属視覚支援学校時代のことでした。学校の小さな12mプールにジュースの缶を投げて、「拾え~」とおっしゃったことがあったのです。皆でひいひい言って探しましたね。でも、そのユーモアある授業がとっても楽しくて。壮絶な反抗期もあった私ですが、寺西コーチの教えだけはいつも素直に聞き入れることができました。